「えっ、これって血尿?!」
にもかかわらず、当の愛犬は元気そうにしている・・・となると、病院へ連れて行くべきなのかも判断が付きづらく困ってしまいますよね。
犬の血尿は心配ないのでしょうか?
※この記事と併せて読むならこちらの関連記事もどうぞ。
血尿、でも元気・・・?一体何が原因なの?
ペットシーツについていた、赤やいつもと明らかに違う濃いオレンジの尿。血尿が出ているのに、特にいつもと変わった様子もなく元気で、ごはんもしっかり食べている。
おしっこの量や頻度が極端に多かったり、元気がないなどの様子があればすぐにでも動物病院へ駆け込むところですよね。しかしいつもと変わりなく元気にしていると、どうして良いものやら判断が付きかねることも。
一体どんな原因で、犬の血尿は引き起こされるのでしょうか。食欲があり元気そうでさえあれば、特に心配しなくても良いものなのでしょうか?
犬の血尿にはこんな原因が
「血尿」に見える尿には2種類あった
血尿には、出血による「血尿」と赤血球の中の色素が排出されて赤くなる「血色素尿」があり、それぞれに原因が異なります。
見た目での判断が付くものではありませんが、この2つのどちらであるかによって原因が違ってきます。
「血尿」の原因
ワンちゃんの体内で尿が通る場所のどこかから出血していることによる血尿で考えられる原因は大きく4つ。
細菌感染による炎症
細菌感染によって起きた炎症から出血している場合です。オスでは前立腺炎、性別を問わないものでは膀胱炎が挙げられ、膀胱炎はメスにより多くみられます。
膀胱炎は細菌感染だけでなく、結石やストレスが原因となって引き起こされることもあります。
おしっこの回数が多い、痛がる様子がある、血のかたまりが一緒に出ているといったことがあれば膀胱炎が疑わしいでしょう。
腫瘍
高齢犬により多い原因としては腫瘍によるもの。腫瘍組織はとても脆く出血しやすいと言われています。
血尿の原因が腫瘍であった場合、意外にもワンちゃん自身は元気も食欲もあるということもあるそう。
尿路結石
尿路結石は食生活や体質のほか、長期にわたり尿路感染症があったワンちゃんなどにできることがあります。
できてしまった結石が尿路を傷つけ出血したことにより血尿となります。
おしっこが出にくい様子がみられるようであれば尿路結石の可能性を疑ってみましょう。
結石が原因の場合でも元気や食欲があることが多いですが、症状が悪化すると尿路閉塞や腎不全などに発展する可能性もあります。
生殖器疾患
オスの前立腺の疾患による出血、メスの膣や子宮の病気からくる出血などにより血尿がでることがあります。
ただしメスの場合、発情期であればヒートと呼ばれる生理の経血が尿に混じっただけという場合も。
「血色素尿」の原因
血色素尿では、何らかの理由によって赤血球が壊れる「溶血」が起こり、その色素が腎臓から排出されて尿が赤くなります。
血色素尿の場合には重度の貧血をともなっていることが多く、緊急性が高いケースと言えます。
細菌、寄生虫などの感染症
マダニが媒介するバベシア症や蚊が媒介するフィラリアによって血色素尿が見られることがあります。
7種・8種などの混合ワクチンに含まれるレプトスピラでも見られ、これらの感染症の発生率はそれぞれ地域によって違いがあります。
自己免疫の異常
自己免疫性溶血性貧血などの免疫の異常で血色素尿が起こることがあります。
腫瘍
膀胱に腫瘍がある場合ではなくても、脾臓や肝臓の腫瘍で血色素尿が見られることがあります。
中毒症
有名なところでは玉ねぎなどのネギ類による中毒で赤血球が破壊されたことによるものです。
ほかにも中毒を起こし血色素尿の原因となるものには、ニンニクやチョコレートがあります。
病気のほかにも可能性がある血尿の原因
人間のケースですが、踏み込みが強い剣道をする人に多くみられると言われる運動後性血尿やヘモグロビン血尿などと呼ばれるものがあります。実は犬でもハードな運動をした後に同じような理由で血尿がでることもあるのだとか。
赤血球の破壊が少量であれば肝臓内で処理され、肝臓の処理能力を超える量の破壊がおきたときに尿から排出されます。この場合には一時的な血尿で済みそうですが、心当たりがある場合には、歯茎や舌の色など貧血を起こしている様子がないかの確認はしておいた方が良さそうです。
愛犬が血尿!その対処は?
ヒートの経血が混じっていただけ、などの「なーんだ」で済んでしまう場合もありますが、大きな病気やそれ自体は軽度でも放置すると合併症などの危険があることが多い、犬の血尿。
愛犬の血尿と思われるものを見つけたら、どう対処したら良いのでしょうか?
※この記事と併せて読むならこちらの関連記事もどうぞ。
尿の状態、愛犬の様子を確認しよう
ペットシーツについている尿から血尿が判明することがありますが、このペットシーツが青かったり血尿でも色の薄い場合には発見がしづらいもの。そういった「分かりにくいけど疑わしい」というときには、ペットシーツを白いものに変えたり、トイレの後に白いティッシュペーパーを押し当ててみると良いでしょう。
血尿の場合、見るからに赤い場合や濃いオレンジのこともありますが、薄いピンク色をしていることもあります。また愛犬の様子として、頻尿・出にくそうにしている・陰部を舐めたりと特に気にしている様子があるようであれば、ペットシーツを見ただけでは気づきにくくても実は血尿がでているという場合もあります。
また尿の頻度や量、痛みがありそうか、ほかに何らかの症状が出ていないかをよく確認しましょう。
こんなときは急いで病院へ!
尿路結石などで傷がついたことによる血尿であれば、治療の必要はあるものの緊急性としては低め。
ただし、主に血色素尿で見られるような原因に当てはまっていればほとんどの場合で緊急を要します。
歯茎や舌が白くなるなど「貧血」と思われる様子がある場合
血色素尿が出ている場合、赤血球の破壊により重度の貧血を起こしている場合が多いといわれます。
赤血球は酸素を運ぶ役割をしているため、この状態では体に酸素が行き渡らず、命にかかわります。
避妊をしていないメスの場合
メスの場合は子宮蓄膿症などで血尿が出ていることがあります。
子宮蓄膿症では子宮に膿がたまりますが、悪化するとたまった膿で子宮が腫れ上がったり破裂することがあります。
食欲不振や嘔吐・下痢をともなっている
激しい痛みをともなうオスの前立腺炎でも嘔吐が見られることがありますし、玉ねぎなどによる中毒で血尿が出ている場合にも下痢や嘔吐といった症状をともないます。
血尿がでたときの治療にはどんなものがあるの?
血尿の原因により治療方法は違いますが、血尿が続いている場合などはまず尿検査・エコー検査・血液検査が行われることが多いようです。
膀胱炎や腎炎であれば2週間ほどの抗生物質の投与、尿路結石でまだ体内に結石が残っていれば大きさにより点滴で溶解させたり、大きければ手術で取り除くことがあります。
また、玉ねぎなどによる中毒である場合には飲み込んだものを吐かせたうえで、抗酸化剤やステロイド剤により赤血球の破壊を食い止める治療が行われます。
投薬で食い止められない場合には輸血による治療が行われることもありますが、輸血する血液自体の確保が難しく、拒絶反応の可能性からリスキーな治療でもあります。
緊急性は低くても早めの受診を
犬の血尿は、多くが早期の治療開始を必要とするもの。
そのなかで尿路結石や膀胱炎は比較的緊急を要しませんが、放置はできません。
膀胱炎を悪化させれば腎盂腎炎を引き起こしますし、尿路結石も結石によって尿路閉塞を起こせば最悪は膀胱破裂の危険もあります。そのほかにも合併症の危険があり、最悪の場合には手遅れとなることも。
犬の血尿ではたとえ食欲もあり元気に見えても、油断せず早めに受診することが必要です。
スポンサーリンク