犬の血統書は、戸籍のように「その犬の家系を表するもの」であり、身分証明書のように「特定の競技会に出場するために必要なもの」でもあり、売買においては品質証明書のように「その犬の価値の高さを証明するもの」にもなります。しかし、血統書はそもそもどこで発行されるのでしょうか?また、どのような手続きが行われるのでしょうか?犬の血統書について、少し詳しく見ていきましょう。
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血統書はどこで発行されるの?
実は、血統書の発行元はひとつではなく、いくつかの団体がそれぞれで発行しています。
【一般財団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)】
国際畜犬連盟に登録している、日本を代表する愛犬団体です。血統書を発行する団体として日本最大規模で、その発行数は日本国内の血統書の約90%を占めています。父親となる犬はDNA登録が必要など、厳しく管理されています。
【NPO法人 日本社会福祉愛犬協会(KCJ)】
ジャパンケネルクラブと比べて血統書登録の条件が易しく、比較的簡単に血統書を取ることができます。
【日本犬保存協会】
国の天然記念物に指定された六犬種(柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬、秋田犬)のみ血統書を発行しています。
【日本コリークラブ】
コリー犬種(ラフコリー、スムースコリー、シェットランドシープドッグ、ボーダーコリー)のみ血統書を発行しています。
【日本シェパード犬登録協会】
ドイツシェパードのみ血統書を発行しています。日本で唯一、世界シェパード犬団体連盟(WUSV)に加盟している団体です。
【警察犬協会】
協会指定の7犬種 (エアデールテリア、ボクサー、コリー、ドーベルマン、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ジャーマンシェパード)のみ血統書を発行しています。
このほかにもいくつもの団体があり、それぞれが血統書を発行しています。
血統書の見方について
それでは、発行数が一番多いジャパンケネルクラブの血統書を例に見ていきましょう。
(1) 犬の名前
ここには、ブリーダーがつけた犬の名前と、ブリーダーの屋号が組み合わされて表記されます。また、ブリーダーがつけた犬の名前とは別に「コールネーム(呼び名)」を記載することもできます。
(2) 犬のデータ
犬種名、登録番号、性別、生年月日、毛色、DNA登録番号、ID番号、股関節評価、肘関節評価が記載されています。すべての犬種に、固有の記号(ポメラニアンではPO、ビーグルではBEなど)がつけられています。また、訓練試験を行っていれば、何の訓練試験(警察犬や同伴犬など)を受けたのかもここに記載されます。
また、犬の代表的な遺伝性疾患である股関節形成不全症・肘関節異形成症を減少させるため、ブリーダーの希望により、特定非営利活動法人日本動物遺伝病ネットワーク(JAHD)と協力して、股関節評価、肘関節評価を血統証明書に記載することができます。
さらに、犬のデータのほかに繁殖者、所有者、譲渡年月日もここに記載されます。
(3) 父親の血統図
1番は父犬、3番は父方の祖父、4番は父方の祖母を記載しています。7~10番はさらにその曽祖父母へとさかのぼって記載されています。
(4) 母親の血統図
2番は母犬、5番は母方の祖父、6番は母方の祖母を記載しています。11~14番はさらにその曽祖父母へとさかのぼって記載されています。
続いて裏面です。
(5) 登緑日、出産頭数、登録頭数、一胎子登録番号
登録された日と、一緒に生まれた兄弟の数を、オスメスごとに記してあります(死亡した犬は除きます)。
(6) チャンピオン賞歴
取得したチャンピオンの種別と登録日が記載されています。
(7) DATE ISSUED
血統証明書の発行日です。
(9) 4代祖血統証明書発行申込書
ジャパンケネルクラブでは、通常、3代前の祖先までを記載した血統証明書が発行されますが(3代祖血統証明書)、さらに詳細な血統管理のために、4代祖血統証明書を発行することも可能です。
血統書はどのタイミングで誰が申請するの?
血統書は、子犬が産まれるとブリーダーの方が申請・登録手続きをします。
なお、申請に当たっては父犬がDNA登録していることと、血統書の名義人(ここではブリーダーの方)がジャパンケネルクラブの会員であることが義務付けられています。
なお、生後9ヶ月未満の親犬から産まれた場合は早期繁殖とみなされ、血統書の登録をすることができません。
この申請ののち、ジャパンケネルクラブによる厳しい審査を経て認められると、申請したブリーダーの方に血統書が発行されます。申請後、約半月ほど時間がかかります。
ブリーダーではない人が血統書登録をする場合は?
ブリーダーではなく一般の方が血統書登録をする場合は、まずはジャパンケネルクラブの会員になること、犬舎登録をすること、親犬のジャパンケネルクラブの血統書があること、父犬のDNA登録が行われていることが必要になります。
基本的には、生後2年を過ぎると血統書の登録はできなくなります。ただし、近年はDNA鑑定の精度が向上し、これにより親子関係が証明された場合には、2年を過ぎていても血統書登録ができます。
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血統書の発行に費用はかかる?
血統書の発行は有料です。費用については内訳が細かく分かれていて、だいたい1万円以内に収まる場合がほとんどです。なお、名義人をブリーダーから購入者に変更する場合は、申請手続きと数千円の費用が必要となります。
血統書の再発行はできる?
血統書の再発行は、その血統書の名義人のみ行うことができます。そのため血統書つきの犬をペットショップなどで購入して、名義人変更をしていない場合は、購入者が血統書の再発行申請を行うことはできません。
血統書の必要性は?
ペットショップやブリーダーの方から犬を飼った場合、今の時代は血統書もついている子がほとんどです。しかし、その子を迎えてから最後に見送るまで、一度も血統書を使う機会がなかったという人がほとんどでしょう。
純血の子を繁殖させたい(子を血統書登録させたい)場合や、特定のドッグショーや競技会に出場する場合は、血統書が必要になりますが、それ以外で使用することはまずありません。
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まとめ
血統書は、そのほとんどがジャパンケネルクラブで発行されたものです。ここでは、それぞれの犬種の血統を守るため、基準が厳しく設けられています。血統書には、その子自身のことや、その子の親、祖父母などの情報まで記されており、どのような生まれかを知るためには大変有効です。ただし、一般家庭で育てる場合は、血統書が必要になる機会はほとんどありません。
血統書のある子が優れているかと言えば、決してそのような訳ではなく、血統としては純粋かもしれませんが、時には雑種の方が、生命力が強いと言われることもあります。血統書のある・なしで、犬との日々の生活が変わると言うことはまずありません。
血統書があってもなくても、愛犬との幸せな日々を大切に過ごしてくださいね。
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