犬のしつけといえば、失敗したら叩く・マズルを強く握るなどして教える、主従関係を築くことが大切。
そう言われてきました。

しかし最近では、この「犬のしつけといえば」の続きに変化が起きています。
近年定着しつつあるしつけ方法やその考え方とは、どのようなものなのでしょうか?

変化している「しつけ」の考え方

出典:Wikipedia

「犬のしつけといえば」の続きは大きく2種類

愛犬のしつけに関する方針や考え方は、飼い主さんの数だけあると言っても過言ではありません。
とはいえ、最近よく言われるしつけ方法を大きく分類すると 2つの考え方に分けることができるでしょう。

1つは、昔から言われる「主従関係・上下関係をしっかりと築く」という考え方です。

この具体的なしつけ方法は、できればごほうび、できなければ叩いたり大声で叱る、といういわばアメとムチ。
上下の関係性を明確にしつつ、悪いことをしたらしっかりと叱り叩いてでも教える、という考え方ですね。

2つめは、近年定着しつつある「褒めたりごほうびを与えて教える」という考え方。

こちらは犬の本能や習性に合わせて導くという前提のもと、できたことを褒めます。
また褒める際にオヤツなどごほうびを与えることで「言うことを聞くと良いことがある」という経験をさせて自ら飼い主さんの指示を聞くようにするという考え方とも言えるでしょう。

もちろん、どちらの考え方もしつける内容や愛犬の状況によって使い分けているという飼い主さんも多くいます。

なぜ「今まで通り」だけではなくなったの?

アメリカでは、1980年代頃から前者の叩いてでもという方法が盛んに言われていたそうですが、2000年代以降、APDT(ペットドッグトレーナー協会)が声明を出すなどの流れの中で、後者の本能や習性を加味した褒める方式へと主流が移り変わっているそうです。

APDT(ペットドッグトレーナー協会)の声明では、前者の方法に対し具体的にはこのように述べていました。

むしろ問題行動を増やしたり、イヌと飼い主の関係を壊すかもしれない。
(中略)身体的、あるいは精神的な脅迫は、効果的なトレーニングを阻害し、イヌとヒトとの関係を傷つける。

引用「APDTの「リーダー論」に関する声明|イヌの言い分、ヒトの都合。元ドッグトレーナー、大学へ行く。」

日本で後者の方法が言われるようになってきた背景には、そういった海外の風潮の影響も考えられるでしょう。しかしそれだけではなく、ペット犬による咬傷事故の原因として叩くなどの体罰が疑われることにも理由の一端があるかもしれません。

「叩いちゃダメ!」理由と別の方法は?

「叩いてはいけない」と言われる理由は?

最近の犬のしつけ方法の本やインターネットの情報の中には、「絶対に叩いてはいけない」と明言しているものもあります。
ではなぜ「叩いてはいけない」と言われるのでしょうか?

思いっきり叩いてしまいました。
(中略)これ以上つよく叩くようになったらいつかケガをさせるんじゃないかと怖いです。
(中略)うっかり顔を叩いてしまい、撫でようと手を頭に持ってきたらビクっとされてしまいました。

引用「Yahoo!知恵袋」

このお話をしていたのは、ワンちゃんの噛み癖に悩んでいた飼い主さんです。
顔を噛まれて 5針縫うケガをしたことをキッカケにしつけの方法を変えようと叩くようになったそうですが、それでもなかなか噛み癖が直らないので、何か良いしつけ方法は、というのが質問内容でした。

その中にあったこの飼い主さんの心配こそ、「叩いてはいけない」と言われる理由でもあります。

愛犬のケガの恐れ

もちろん叩く場所にもよりますが、頭など叩いてしまうと当たり所によっては目をケガして失明してしまうなどの深刻な問題に発展します。
小型犬であれば特に、叩かれた衝撃で骨折してしまうこともあります。
それが頭であれば、死に至ることもあるでしょう。

問題行動に発展する恐れ

愛犬のケガのほかでは、人や他の動物に対しての「吠える」「噛みつく」といった問題行動の原因になりかねないというものです。

先ほどの引用文にあった、顔を叩いてしまったあと撫でようとしたら怯えられてしまったというお話。

叩かれるなどの体罰は、人間と同じように当然ワンちゃんにとっても痛くて怖いものですよね。
その恐怖心や痛みの経験をもとに覚えさせるという考え方もありますが、必ずしも覚えるものでもありません。

ワンちゃんが、その恐怖や痛みから身を守ろうとしたとき、どのように反応するでしょうか。

怯えて逃げる、ということも考えられます。
それと同じだけ、「唸る・吠える・噛みつく」という手段で抵抗することも十分考えられるのです。

ワンちゃんがこのような攻撃行動によって抵抗した場合、飼い主さん自身がケガをすることもあります。

また、飼い主さんには恐怖から服従しても、ほかの人間や動物に対しては攻撃的になり「噛み癖」「吠え癖」といった問題行動に至る危険性も考えられます。

「いいこと」で教えようという流れ

こういった問題を背景に、叩く・大声で叱るなどをせず、できたことを褒める・ごほうびを与えるという方法を採りましょうというのが近年よく言われるようになった考え方です。

具体的なしつけ方法の中には叱ることが出てくるものもありますが、多くの場合叱るというよりは「できたことを褒める」ことに重きを置き、ワンちゃんに「いいこと」を繰り返し経験させることによって教えるという方法です。

ワンちゃんを「成功した」という状況へ誘導し、できたところで褒めてごほうびを与える。

その「いいこと」があった体験を重ねることで「こうする」と「オヤツやお楽しみがある」と覚え、「オヤツやお楽しみのため」に自ら「こうする」という習慣をつけようというわけです。

実際の例として、先ほど叩く方法に変えたものの噛み癖が直らず悩んでいた飼い主さんのその後のお話を見てみましょう。

もう愛犬の事は叩いていません。
長期戦になると思ったのですが、お座りさせてから遊ぶようになったらとても効き目がありました。噛んだ時も今まで何やってもダメだったのが痛いでちゃんと止めるようになりました!

引用「Yahoo!知恵袋」

回答者の中で、ワンちゃんの要求に応える前に必ずこちらの要求に応えさせるという方法を提案した方がいました。

具体的には、ワンちゃんが遊んで欲しくて噛みついてきたら、一度お座りや伏せをさせ、それができたらごほうびとして要求に応えて遊ぶ、というものです。

当初は飼い主さんをして「とても気が強い」と言わしめた、おねだりの方法がちょっと強烈だったワンちゃん。
叩かなくても、こうしてワンちゃんにとっての「いいこと」で覚えたり、適切なコミュニケーションが取れるようにもなるのです。

叩かなくてもしつけはできる!

叩く方法を経験し、叩かない方法で噛み癖を乗り越えた飼い主さんとワンちゃん。

遊んで欲しくて噛みついては飼い主さんに「お座り」を要求され、「お座り」をすると遊んでもらえる。
この繰り返しの果てで、このワンちゃんはいずれ「飼い主さん遊んで!ほら見て、お座りしたよ!」というおねだりの方法を覚えることでしょう。

そうなれば、悩みのタネだった噛み癖は結果的に無くなるのです。

かわいい愛犬を叩かずに済むなら叩きたくないというのは、今どんなしつけ方法を採用している飼い主さんも同じでしょう。
ご自身の考え方や愛犬に合う方法を選びたいですね。

(関連記事)しつけについてはこちらもどうぞ。

※ 犬のしつけはどうして必要なの?いうことを聞かせたらかわいそう?

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