ネット上でもちらほら見るのですが、犬には塩分は不要だと信じていらっしゃる方が多いようですね。

でも、よく考えていただくと、犬は私たち人間と同じ哺乳類です。哺乳類はミネラルがなくては生きていけず、塩分はミネラルの塊です。そのため、汗をかくかかないにかかわらず、適量の塩分は犬にとっても必要なのです。

とは言え、「適量」ってどのくらいの量?と疑問が湧いてきますよね。特に手作り食を作っている方は余計に気になる点かもしれません。

どんな量の塩分が犬にとって適切なのか、あるいは今現在で愛犬の塩分は足りているのかなど、こちらを参考にチェックしてみてくださいね。

犬に塩分は必要か

犬は汗をかかないから塩分が不要というのは間違い

そもそも犬には塩分が不要!という説はどこからきたのでしょうか。10年前ほどではないにしても、いつのまにか、犬は汗をかかないから塩はいらない、なくても大丈夫などという極論がなんとなく一人歩きしている感じがします。医師や専門家が塩分を控えるようにと言っていることはありますが、これはあくまでも「控える」であって、すべてカットするという事ではないと思われます。

また、犬はまったく汗をかかないというわけでもなく、主にエクリン腺がある肉球や鼻先から汗をかきます。また、全身にあるアポクリン腺からもわずかに汗をかくこともあります。実際じわっと湿っている体になっていると報告されている口コミもよく見かけます。ただし、人間のように全身ビショビショでダラダラ流れてくるほどの汗をかくわけではないので、犬の汗として体外に流れ出る塩分が少ないというのは本当です。

とは言え、まったく汗が出ないわけではありませんし、体内で消費される分や排せつされる分もありますので、犬も外から塩分を補給しなければ熱中症などにもかかりやすくなってしまいます。そもそも、ドッグフードにも塩分が含まれているものが多くあります。もしも犬にとって塩分が不要だというのであれば、入れたりしませんよねぇ。

塩分は人間にも犬にも適量が必要です

塩は、哺乳類の生命を維持するためには必要ですが、量を摂りすぎると害をなします。下手すると死にますよね。これは犬も同様で、適切な量でないと臓器に負担をかけたり、一度に多すぎる量を摂ると死に至るような重篤な状態になる事もあるのです。

一説によると人間が必要とする量の三分の一くらいが犬にとっての最適量の目安だといいますので、それが本当なら、人間の食べ物の残り物をそのまま加工もせずに与えていると、確かに塩分過多になりかねません。昔は、今のようにドッグフードの種類が豊富でもありませんし、各家庭で人間の残飯を犬に与えるのが普通な時代もあったでしょうから、そんな事もあって塩分過多が警戒されてきたのでしょうね。

本質的には、適度な塩分は犬だって必要です。むしろ、適度な量の塩分は、体の機能を維持するためにもなくてはならないと言っても良いでしょう。

塩分過多もダメ!適切な塩分量とは

人間の場合塩分過多は様々な病気を引き起こす

人間にとっても犬にとっても、多すぎても不足してしまっても健康的に害のある塩分。一般的に、人間にとっては1日の健康的な塩分の摂取量目安は6g未満だと言われていますよね。最近は生活習慣病リスクを減らすために、減塩製品もずいぶん増えてきました。人間の場合、塩分過多による高血圧、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、腎障害などのリスクがぐぐっと上がってしまうからです。ガンの原因にもなるという研究結果もあるようですから、健康寿命を延ばしたいなら減塩を目指したいというのも頷けます。

犬の場合も人間同様の害が想定できる

犬の身体の構造は、細かくは人間とはいろいろ違った構造をしているとはいえ、同じ哺乳類の仲間ですから、基本的な機能や構造は似通っています。例えば、腎臓機能や血液の機能も似通っていることから、塩分過多が続くと人間同様の病気のリスクが高まる事も想像できます。心臓を動かすのにも必要不可欠なのが塩分なのですが、多すぎると今度は高血圧になって心臓に負荷がかかりすぎ、心臓病のリスクも高まります。

犬も高齢化し、平均寿命も年々伸びている昨今、できれば犬にも健康的に楽しい老後を送らせてあげたいですよね。

塩分過多になった時の症状とは

普段の食事で塩分過多になった場合、緊急で重篤な症状が出るわけではないので、見た目ではなかなか塩分過多であるかどうかの判断はできません。ただし、水をやたらと多く飲むようであれば要注意です。そんな様子が見られたら、不整脈になっていないか、ハァハァといつもより息が荒くなっていないかなどもチェックしてみてください。この症状は、いずれも慢性的な塩分過多によく見られる症状です。普段の食事を見直して、必要に応じて獣医さんにも相談してみましょう。

万が一、犬が誤飲などで塩自体を大量に食べてしまったなんてことが起こってしまったら、ただちに動物病院を受診して診てもらうようにしましょう。大量の塩分を摂取してしまうと、呼吸器障害が起きて脳浮腫や肺水腫、腎不全などの重篤な症状になることもあります。誤飲は飲み込んでしまったものによって、救急を要することもありますので、注意したいですね。

誤飲についてはこちらも参考にしてくださいね。

要注意!犬が誤飲しやすいものをしっかり管理しよう

愛犬がトイレシートを誤飲!シートポリマーが心配だけど

愛犬の誤飲で病院へ!ペット保険は保障される?

塩分不足になったらどうなる?

犬にとって必要な塩分が慢性的に不足してしまうと、食欲がなくなったり、だるそうに動かないなどの症状が出てきます。程度が悪くなってくると、下痢や嘔吐、自力で立てなくなる場合もあります。「犬の健康を考えて塩分を控えている」というつもりだったのに、体調を悪くさせてしまっては元も子もありません。

例えば、人間の汗を舐めたがる、土や壁などをよく舐めるなどの行動が出たら、塩分が不足しているサインかもしれません。こういった症状が出る前に、食事を見直して適正量は摂るように気を付けてあげたいですね。

犬にとって塩分摂取の適正量目安とは

人間なら1日6g未満。では、犬なら人間の3分の1で2g未満・・・という換算になりますが、ちょっとまってください。犬って、小型犬と大型犬では食事量も運動量も、そしてそもそも体格が人間で言う所の子供と大人くらいずいぶん差がありますよね。ざっくりと2gと決めてしてしまうと、おそらく小型犬では過多ぎみになってしまうので、体重によって塩分目安量を変えて考えてくださいね。厳密にいえば、人間も体型によって適切な塩分量は異なるはずですよね。

犬の体型による適正塩分量には諸説ありはしますが、犬に最低限必要な塩分量は、1日に4mg/kgほどだとしている研究もあります。でもこれは最小限ですので、生命維持をなんとかできるという程度であることには要注意です。

犬が健康的に生活するために必要な量となると、さらに意見が分かれる所ではありますが、ナトリウムが1日に25~50mg/kg必要と考えられているのが現時点での一般的な見解のようです。これはナトリウム量ですので、塩分換算する場合は、ナトリウム(mg)×2.54÷1000の計算式で求められます。

例えば、この計算式に当てはめた場合、10㎏の犬ならナトリウム50(㎎)×10(kg)=500(㎎)、塩分に換算すると500(㎎)×2.54÷1000=1.27(g)という事になります。これ以上摂取すると塩分過多ぎみという事になりますので、注意しましょうね。

その塩分量ってどれくらい?

塩の量1gとか3gと言われても、具体的にはピンときませんよね。

一般的に、お味噌汁1人前で1g強の塩分が含まれています。(使うお味噌の種類などによっても変わってきますが)また、ちくわ1本で0.6g、甘口の塩じゃけが1切れで2.1g程度、赤みそ大さじ1杯で2.3g程度です。

手作りフードの場合、塩分を極端に控えてしまって塩分不足になっているかもしれませんので、フードに入れる食材や調味料を工夫して塩分を調整するとよいでしょう。例えば、フードにお味噌を加えれば、塩分の計算をしやすいだけではなく酵母や乳酸菌も摂取することができるので、便利な調味料となります。

また、実際に適切な塩分量を満たす程度のフードを作ってみると、意外とちゃんと塩気があることが分かります。「塩味を感じたら塩分過多なのでは?」と心配するあまり塩気を感じない程度にしか塩分を加えないと、逆に塩分不足になってしまっているかもしれません。まずは、今現在愛犬が日ごろ食べているフードやオヤツの塩分量がどの程度なのかを確認してみましょう。

うちの子の塩分は足りてる?

さて、ここまで読んでいただいた方の中には、じゃあうちの子って塩分足りてないのかも?と不安になられている方もいらっしゃるかもしれませんね。特にドッグフードではなく、手作りフードを毎日頑張って与えている場合は心配かもしれません。もしも、塩などの調味料を使った味付けをまったくしなかったなら、「塩分を全く摂取できていない!」と慌ててしまうかもしれませんが、そうとも言い切れません。

仮に調味料をまったく加えていない手作りフードだとしても、食材の中にもナトリウム自体は含まれていますので必要最小限のナトリウムは摂れている可能性もあります。もしも正確に知りたければ、使っている食材ごとにナトリウム含有量を調べて前述した計算式を元に塩分を算出し、せめて体重1Kgあたり25㎎のナトリウムは確保できるように調節してみてくださいね。(面倒かもしれませんが・・・)

また、ドッグフードを普段から与えているなら、まず塩分不足になることは少ないです。それよりは、逆におやつに含まれる塩分のために、塩分過多となってしまう心配があります。ドッグフードやおやつなどには必ず成分表が袋や箱のどこかにかかれています。そこに食塩相当量、あるいはナトリウムの含有量が示されていますので、先ほどの式と照らし合わせてナトリウム摂取量が不足しているのか、逆に過剰なのかどうかが確認できます。

頑張りすぎない程度に気にすればOK

ここまで記事を読んできて、ストイックに塩分管理をしなくちゃと思ってしまうかもしれませんが、実はそんなに厳密にする必要もありません。だって、人間だって1日の食塩量を考えて食事を摂っているわけでもないのに健康だったりしますよね。犬の場合も、多少のオーバーや不足は他の日で調整できれば問題ありません。「今日はオヤツいっぱいあげちゃったから塩分過多かも。2~3日は食事の塩分量を減らそう。」とか、市販のオヤツから無塩の手作りオヤツに切り替えるなどの工夫でバランスを調整してあげれば大丈夫なのです。

問題なのは、慢性的にずっと不足気味とか、ずっと過剰とかになってしまう事です。そうならないように、まずは一度、現在の1日の食事量からナトリウム相当量を算出して、普段の食事に塩分が多めになっているのか不足になっているのかを考えてみてくださいね。その上で、一日で摂取する食事やオヤツの塩分量を調整してあげましょう。

 


スポンサーリンク

 

関連記事