地震大国である日本。近年では東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震など多くの地域で大規模な地震がありました。また、最近は台風による水害や土砂崩れなどの影響で多くの方が避難を余儀なくされていますね。悲しい思いをした飼い主さんやペットたちもいました。(参照:『被災、その後。災害を経験した犬たちから学ぶ災害時対策とは』)

そういった中、愛犬を飼われている方の同行避難について、全国の自治体がその体制を整えています。

愛犬も大事な家族の一員。非難する時は一緒がいいですよね。今回はそんな愛犬家の方必読の情報をご紹介したいと思います。

もしもの時に愛犬同伴ができる避難所はどれくらいあるの?

災害時の避難所として定められている施設は全国で約15,000箇所あると言われています。

そして東日本大震災を機に、災害時のペットの避難について国の指針が示されているものとして、環境省が推奨する「災害におけるペットの救護対策ガイドライン」があります。そこには、ペットの同行避難者への対応として以下の内容が記されています。

避難指示が出された際に都道府県等は、避難誘導を行う市区町村担当部署と連携して、ペットの飼い主に対して、人の安全を確保した上で、ペットを連れて避難するよう呼びかけ等を行う。避難所によりペットの受け入れが不可の場合は、ペット受け入れ可の避難所への避難指示についても可能な限り行う
避難所に避難してきたペット同行避難者に対し、避難所管理者等は、ペットの飼育場所、飼育ルール等について指導を行う。
引用:[災害発生時の動物救護対策(1)]災害時におけるペットの救護対策ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/03.pdf

いろいろ書いてありますが、つまり、「飼い主は基本的にペットを一緒に連れて避難するように」と、されている訳です。同時に、受け入れする側も体制を整えるようにとされていて、各自治体はペット同伴の避難所ルールやマニュアルを策定を行っています。

東京都(23区内)を例にすると、23区中16区が区内すべての避難所でペットの同行避難が可能となっており、内15区がガイドラインの制定まで完了しています。その他の区でも一部の避難所で同行避難が可能となっていますので、お近くにお住まいの方は各自治体のホームページを確認してみてください。

ちなみに、「東京23区|BOUSAI時計」によると、ペットと一緒に避難することには同行避難と同伴避難の2種類があり、基本的には同行避難であることがほとんどなんだそうです。同行避難については、この次に説明します。

参照:東京23区|BOUSAI時計

犬の同行避難とは?

同行避難とは、災害が発生した際に飼い主が飼育している犬を同行させ、避難所まで安全に避難することを言います。ただし、避難所において飼い主と犬が同一の空間で居住できるという意味ではありません。同一の空間で居住できるのは「同伴避難」と言います。同伴避難については安全面や衛生面の観点から認めていない自治体もありますのでご注意ください。それぞれの避難所のルールを確認して、それに従いましょう。

また、どのような状況下においても犬を必ず同行して避難しなければならないというものでもありません。自宅が安全で定期的に犬の世話をするために一時的に戻れるという状況であれば、犬は避難所に連れて行かず自宅で待機ということも選択肢の一つかと思います。ただし、そういった場合においても、日々の食事と健康状態の確認は大切ですので注意が必要です。

なお、犬や猫などの一般的なペット以外の動物を飼育している方は、避難所でそのペットの受入れが難しいという可能性もあります。そうした場合、同行避難自体が難しいという事になりますので、万一のときの預かり先を用意しておくことが大切です。

過去の事例で見るペットの避難所生活とは?

国が推奨するガイドラインが出来るきっかけとなったのは、東日本大震災です。災害時に同行避難者を受け入れた自治体は、飼い主とペットとの居住スペースを区別する方策として、避難所の一部をペット飼育専用スペースとして確保する方法や、避難所の敷地内にペット飼育専用スペースとしてプレハブなどを設置する方法などで対応していました。また、同行避難者と非同行避難者との空間的な区分による避難所生活への配慮を実施した自治体もありました。

受け入れる側である自治体も、出来る限り避難者に精神的負担がかからないような対策を考えていたのですね。

では、具体的にどのような事が行われていたのでしょうか。いくつかの事例をご紹介したいと思います。

事例①(埼玉県)

敷地内の一部の建物をペット飼育専用スペースとして使用した事例です。専門家の知識とボランティアの熱意により、快適な環境作りを行っています。

埼玉県加須市では、「旧騎西高校」を避難所として、福島県双葉町の住民約 1,400 人を受け入れた。動物愛護団体、動物愛護推進員、双葉町役場関係者、加須市及び埼玉県の連携により、敷地内の弓道場を利用してペット専用の飼育施設を設置したほか、動物愛護団体の善意により施設内にエアコンが整備された。
引用:[災害発生時の動物救護対策(1)]災害時におけるペットの救護対策ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/03.pdf

事例②(新潟県)

こちらも敷地内の一部を専用スペースとして使用した事例です。同行避難者への避難所生活中の導線を考慮しつつ、飼育条件を設ける事で衛生的な問題をクリアにしています。

● 新潟市西総合スポーツセンターのゲートボール場をペット用避難施設として利用した。
● ペット飼育スペースを区分し、ペット用避難施設の設置、犬の係留、ケージ内飼育、飼育環境の清掃等を飼育条件とすることで、ペットを飼育していない避難者のストレスにならないよう配慮した。
引用:[災害発生時の動物救護対策(1)]災害時におけるペットの救護対策ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/03.pdf

事例③(福島県・宮城県)

同行避難者と非同行避難者の居住スペースを分けた事例です。

避難所生活は環境に関わらずストレスが溜まってしまう事が往々にしてあります。そういった状況下でも、出来る限り人もペットもストレスがかからない対策を行っています。

郡山市では、避難所敷地内にペット専用施設を建設し、人と動物のスペースを区分することにより、ペットと一緒に生活したい飼い主とペットを飼育していない避難者の双方に配慮した。

(いわき市では、)スペースの確保できる避難所(学校の教室など)では、ペット飼育者と非飼育者の生活スペースを教室毎に分ける等の区分を行った。

(大船渡市では、)ペットと避難者が同じ空間で生活する体育館等の避難所では、非飼育者からペットの臭い、鳴き声、被毛の洗濯物への付着に関する苦情があった。そのため、避難所内に仕切り板を設置し、飼育者と非飼育者の住み分けを行った。また、ドーム型テントを利用して生活スペースを空間的に区分する等の対応を行った。
引用:[災害発生時の動物救護対策(1)]災害時におけるペットの救護対策ガイドライン
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/03.pdf

非難に備えて愛犬の持ち物リストを作ろう!

災害時には、速やかに最小限必要なものをもって非難しなければなりません。人間であれば、水どれくらいとか、どういう食べ物をどれくらい用意しておくといいよ、というガイドがあったりします。では、災害時に愛犬と同行避難する時には何を持っていけば良いのでしょうか?

地震などの災害はいつ起こるか分かりません。いざという時に備えておく必要がありますよね。という事で、避難する時に必要なものを以下にリストアップしてみましたので、参考にしてみてください。

<避難時に持っていく物リスト>

・ ドッグフード
・ お水
・ 犬用の常備薬
・ エサ用の食器
・ トイレ用品(ペットシーツなど)
・ 首輪、リード
・ 犬の健康記録(既往歴やワクチン接種歴などがわかるもの)
・ 犬の写真(飼い主と一緒に写っているものが良い)
・ ケージ、キャリーバッグ
・ その他(ガムテープ、おもちゃなど)

これらのものを最低でも3日分、出来れば5日分を備蓄しておきましょう。また、サッと持ち運べるようなキャリーケースを用意するのも忘れずに。

非難生活で飼い主が気を付けるべきこと

環境省が推奨する「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」を基に、各自治体では避難所でのペットの飼育管理についてもルールを整備しています。

例えば、埼玉県では避難所ごとに同行避難者全員で「飼い主の会」を立上げ、飼い主全員でペットの飼育管理を行う事をガイドラインによって義務付けています。

しかしながら、すべての自治体が同じような施策を行っている訳ではありません。基本的に同行避難時のペットの飼育管理は飼い主が行う事が大前提です。愛犬がペット専用の居住スペースに区分されたとしても、避難所は非飼育者との共同生活の場である事に変わりありません。非飼育者とのトラブルを避けるためにも、飼い主が行う犬の管理は非常に重要なものとなります。

そのためには、最低限の内容として以下の管理が必要です。

愛犬の管理

常に身元が分かるように

ペットは種類に関わらず、慣れない環境におかれるとストレスでその場から逃げ出そうとする事があります。災害時に逃げ出したペットを保護できる可能性は、平常時に比べて格段に低くなります。また、逃げ出したペットが事故に遭う、もしくは事故を起こす事も想定されますので、ゲージでの管理や散歩時のリードの管理はもちろんの事、万が一逃げ出した時に飼い主の元へ戻れるように身元表示を行いましょう。

食事調整と散歩で健康管理

避難所に獣医さんが常駐している事はほとんどありません。よって、愛犬の健康管理は飼い主がしっかりと行わなければなりません。

避難生活の中で犬の健康度合いを確認には、「食欲があるか?」、「下痢をしていないか?」というものがあります。食欲がある場合は良いですが、避難所生活で下痢が続く原因にストレスがあります。下痢が長く続く場合は、腸を休めてあげるためにエサの量を減らすか、何食かは抜いてしまいましょう。うんちの様子に注意して、下痢が止まったら徐々にエサの量を元に戻してあげましょう。

また、避難所生活の間は、犬にとってもストレスがたまりやすいですので、飼い主さんとの散歩や十分に遊んであげるなどしてストレスを解消してあげることも重要です。そのため、散歩は1日2回が理想です。これは、犬に運動をさせるという意味もあるのですが、それに加えて犬にとっての気分転換や気持ちを落ち着かせるという意味合いもあります。人間だって、建物の中にじっとこもっていたらストレスもたまりますし、気分が滅入ったりしますよね。それと同じで、犬だって外の空気を吸ったり様子を見てみることで心の健康を保つことにつながります。

ただし、散歩の際には尿や糞をさせる場所に気を付けましょう。犬は臭いを嗅いだ場所に尿や糞をするので、避難所区画の近くで散歩する際は臭いを嗅がせず、どんどん進むようにしましょう。そうしないと、避難所近辺がペットの糞尿の臭いがするようになってしまいます。ペットを飼っていない人や、特に動物があまり好きではない人にとっては、気になる臭いとなってしまい、トラブルの原因にもなりかねません。

また、エサも散歩も毎日同じ時間に行うと、犬は生活リズムを覚えてしまい、エサの時間が近づくと要求吠えしますので、日によってエサの時間を1時間ずらすなどして要求吠えをなくしましょう。

しつけと清潔さが大切

避難所における非飼育者から飼育者への苦情として最も多いのが、「臭い」・「鳴き声」・「被毛の処理」です。愛犬も自己がある動物ですから、それぞれ性格があるかと思いますが、普段からのしつけはもちろんの事、避難所では決められた場所で糞や尿をするようにさせたり、要求吠えに応えない事で静かにさせたりなどのしつけが重要です。

愛犬が糞や尿をした際は速やかに処理をして放置しないようにしましょう。また、愛犬をキレイに保つためにも定期的にグルーミングをしてあげましょう。その際、グルーミングで出た毛やゴミはすぐに処分するようにしましょう。

飼い主が気をつける事で、周囲とのトラブルを避け、円滑な共同生活が過ごせますよ。


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