マイクロチップとは、ペットの体内に小さなチップを埋め込んで情報を登録することで様々なメリットがあるとして、日本でも徐々に広まってきました。でも、まだまだ欧米諸国に比べると普及していないのが現状です。
そもそも、マイクロチップってなんのために入れるの?痛くはないの?など、飼い主さんにとっても知らなければ不安になるかもしれませんね。
犬にとっては良い物なのか、デメリットはないのか。あらためて詳しい内容をさぐってみましょう。
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ペットショップではマイクロチップ装着済みが多い
近頃のペットショップでは、マイクロチップを既に装着してあってあとは登録さえすれば良いという状態の子犬たちが販売されていることがよくあります。すべてとは言いませんが、今やかなりのペットショップで、販売される前にすでにマイクロチップ装着済としているのが現状です。
犬に関してのマイクロチップ装着について、議論はされていますが、今のところまだ法律で完全義務化されているわけではありません。ただ、動物愛護管理法では努力目標として、飼い主がそのペットを所有していることを明らかにするために首輪・名札・マイクロチップの装着を行うべきで、その努力をする義務があるとされています。
そこで、将来を見越してきちんとした飼い主ならばいずれマイクロチップを装着するだろうという前提のもと、大手のペットショップではあらかじめすべてのペットにチップを入れている事が多いのです。
手間をはぶく、あるいは費用を肩代わりしてくれるサービスの一環でもあるかもしれません(購入の時点で子犬の代金とは別にマイクロチップ装着費用を支払う場合もあります)。実際、2010年時点では名札や首輪の代わりにマイクロチップを装着する選択をした人は少なく、データベースに登録した件数も45万件ほどでした。しかし、2018年10月現在、犬では146万件以上の登録があり、ここ数年で3倍以上に増加していることがわかります。
動物園などでは早くからマイクロチップが有効活用されてきましたが、一般家庭でも、外れたり落としてしまうかもしれない名札や迷子札の代わりにマイクロチップを導入する人が増えてきているのです。
参照:動物ID情報データベースシステム https://www.aipo.jp/Login/Index?ReturnUrl=%2f
マイクロチップってどんなもの?
マイクロチップってなに?どんな形?
マイクロチップは、下画像にあるようなすごく小さなものです。直径2ミリ、長さ8~12ミリの円筒型の器具です。ICとコンデンサ、電極コイルが生体適合ガラスで覆われたものになっています。
マイクロチップを埋める場所はどこ?
このチップを埋める場所は、犬の場合は主に首の後ろ、肩甲骨の間上部あたりです。通常、麻酔なしで埋めるのですが、痛みの程度としては注射をする程度で、埋め込まれる動物の身体に対する負担がほとんどないと言われています。そのため、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類などほとんどの動物で使用可能とされています。
身体に埋め込んだ後で壊れちゃったり割れたりしないのか?など、気になる破損については、環境省のHPによるとと『これまで、故障や外部からの衝撃による破損の報告はありません。』とのことです。
引用:環境省HP http://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html
マイクロチップはいつまで使えるの?体への影響は?
一度体内に埋め込むと、身体のコラーゲンが包み込んでしっかり保持しますので、一生外れる事がありません。耐用年数は25~30年で、電池で動いているわけではありませんので電池交換も不要です。そのため、一度装着すると再度手術することもなく、犬の場合は一生使用できることになります。
成長に伴って多少体内でずれていくこともあるようですが、迷走防止の工夫がされていますので、ほぼ同じ場所に留まることができ、専用の読み取り機(リーダー)で番号情報を読み取ることができます。
また、異物反応が起こる事もなく、体に悪い影響が起こる事はまずほとんどありません。
マイクロチップにはどんな情報が入っている?
マイクロチップに入っている情報は、15桁の数字です。この数字に対応する個体識別情報をデータバンクに登録しておけば、マイクロチップから読み取った番号と照合することで所有者がわかる仕組みになっています。データバンクを管理しているのは動物愛護ID普及推進会議(AIPO)になりますので、そこへ飼い主さんが紙に書いた必要事項を郵送し、代金の1000円を振り込みまたは郵便振替で支払い、登録してもらうことになります。
マイクロチップ装着義務はあるの?
今のところはまだ法的にはマイクロチップを装着しなければならないという義務化はなされていません。ただ、その動物の所有者(日本ではペットは物扱いなので、所有者と言います)がわかるための方法の一つとしては有効な手段ではありますので、欧米諸国では普及活動が盛んとなっていて、かなり浸透しています。
マイクロチップを装着する費用は?
マイクロチップの装着は、チップを体内に埋め込むわけですから、一般人が雑に入れてしまうと炎症を起こしたり、雑菌が入り込んで感染を引き起こす可能性もあるため、必ず動物病院の獣医師に適正な方法で入れてもらうようにしましょう。
気になる費用は、動物病院の価格設定次第でピンキリではありますが、凡そ5千円~1万円くらいで施術してくれます。まだチップを入れ慣れていない医師もいらっしゃるようですので、経験豊富な医師を見つけてお願いすると、さくっと短時間で装着してもらえます。稀に、ペットフェアなど大きなイベント会場で無料で装着してくれることもあるようですが、どういう人が装着するのかは確認してから行う方がいいでしょう。
マイクロチップのメリット
マイクロチップの最大のメリットは、地震や津波などの災害時、交通事故時、迷子になった時などに保護された場合、飼い主のもとへ戻ってくる確率が高くなるということです。チップの脱落、消失がほぼないうえ、チップのデータが書き換えられてしまうこともないので、確実に自分の飼い犬であることを証明できるとされています。そして一度入れると一生使えますので、電池交換などの手間がいらないこともメリットのひとつです。
東日本大震災の時の例を挙げると、首輪や迷子札に飼い主の情報を記載していたとしても、それらが破損や外れてしまっていたという事があり、首輪だけしていた犬で飼い主が判明したのはたったの0.5%だったようです。その一方で、迷子札や観察を確実に身に着けられていた犬の飼い主判明率は100%だったのだそうです。
もしも確実に飼い主がわかるようになっていれば・・・と後悔する飼い主さんの気持ちを想像すると、壊れにくく外れないマイクロチップはそれだけでかなりのメリットがあると言えます。
こちらも参考にしてみてくださいね。
参照:環境省HP 東日本大震災におけるペットの被災概況 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2508c/01.pdf
マイクロチップのデメリット
飼い主さんが心配する最大のデメリットは、愛犬が痛い思いをするのでは、という所ではないでしょうか。一応注射程度の痛みだとされてはいますが、注射針よりは少し太いものでチップを入れることになるので見ているとちょっと痛そうな感じはします。
また、マイクロチップの仕組みそのものが、読み取り機がなければ意味がなくなってしまうこともデメリットと言われています。現在は、日本全国の動物保護センターなどで読み取り機を用意しているケースも増えて行っているようですが、機械を使う方に問題があって正確に読み取れなかったり、そもそも読み取る手続きを取らなかったという事例も過去にはあったようです。
きちんとマイクロチップを装着してきちんと読み取り機で読み込めたとしても、登録情報が正確ではない、最新の情報に更新されていないという場合には、役立たずになってしまいます。飼い主さんがデータ登録をするのを忘れていたり、引っ越しした時に変更届を出すのを忘れていたりすると、結局迷子のままになってしまうこともあります。
ちなみに、今のところマイクロチップにGPS機能はついていませんので、マイクロチップを装着したからといって即愛犬の居場所がわかるというものではありません。適正な運用がなされて初めて100%愛犬が飼い主の所へもどってくることができるのです。
マイクロチップの義務化には課題も
マイクロチップは、人間も自身に埋め込むことを挑戦する人もいるくらい、安全性は高まっているものです。小さいのに外れることもなくしっかり情報を保持していて、保護した犬の身元を証明するには最適な存在かもしれません。
でも、いいことばかりではなくてデメリットもあり、反対している人たちもいます。法律改正の議論の中でマイクロチップの装着義務化も検討されてはいるようですが、まだまだ課題はありそうですよね。例えば、NPO法人のJAVAは、マイクロチップ自体は有効性があるので装着することは良いけれど、義務化してしまうと野良猫を筆頭に、マイクロチップを装着していない動物が殺処分されてしまうのではと危惧しています。
日本ではなかなか普及せず、埋め込むことに抵抗があったのは、動物たちに痛い思いをさせたくないという気持もあってのことだろうと思います。でも、技術は進んでいて、安全性も高く、さほど痛くなく短時間で装着できることがわかり、周りにそういった事例が増えて実感できれば装着したいと考えるかもしれません。
まだ愛犬にマイクロチップ未装着で、これからどうするか迷われている方は、しっかりメリットとデメリットを理解したうえで、どちらにするか選択されるといいですね。
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