犬の目の周りをよく見ると、まるで人間のクマのように赤黒っぽく変色して見える事があります。毛の色になじんでいて模様のように見えなくもないですが、これがいわゆる「涙焼け」と呼ばれる現象です。

犬種によってなりやすいものがいるとか言われていますが、本当のところはどうなのでしょうか。対症療法としては、洗浄したり化粧水で拭くなどのケアをしている方もいると思いますが、そもそもの原因がわからないと根治しませんよね。

どんな所に注目して、改善すれば良いのでしょうか。対処法を考える上でもはずせない色んな原因について、一緒にしっかり考えてみましょう。

犬の涙焼けの原因はいろいろ

原因は、実はかなりの種類があります。原因が特定できれば対処法を考えやすくなります。まず一度は動物病院で詳しく調べてもらい、先天的な問題がないのかを確認しながら、どういう対処をしていけばいいのか相談してみましょう。

よく言われるのは鼻涙管のつまり

涙は、目の潤いを保つために悲しくなくても常に分泌されている体液です。涙腺で作られた涙は涙小管を通り、涙嚢と呼ばれる袋に溜まったあと、鼻涙管と呼ばれる細い管を通って鼻の奥に抜けてゆきます。いわゆる、水道で言う所の排水管とも言える役割が鼻涙管です。ところが、この鼻涙管が詰まってしまうと、排水されるはずの水が排水されずにあふれてしまいます。涙の元栓を止める事はできないのですから、溢れた涙は外にどんどんあふれ出します。これが目の周りを常に濡らし、雑菌の繁殖や炎症を引き起こし、涙焼けとなります。

とは言え、実は実際に鼻涙管のつまりそのものは原因ではなく、何らかの他の原因が引き起こす副次的な症状であることも多いと言われています。

鼻涙管の詰まる原因は一つではない

そもそも、なぜ鼻涙管が詰まってしまうのでしょうか?

原因としてよく言われているのは2種類あります。ひとつは生まれつき鼻涙管が細くて詰まりやすい形状をしていること。もうひとつは、老廃物が鼻涙管に蓄積してしまうからだと言われています。生まれつき鼻涙管が細い場合は手術で広げない限り改善しませんが、老廃物の蓄積に関しては、フードに含まれる添加物の影響があるとも考えられています。

また、よくよく考えてみると、涙の排水システムはなにも鼻涙管だけではありません。涙小管、涙嚢の詰まりや炎症なども涙がうまく排水されない原因である可能性があります。これら全体を含めた排水システムのどこかの箇所の先天性の奇形の場合もありますし、鼻炎や副鼻腔炎などその他の病気の影響で鼻涙管が圧迫されてしまう事もあり得ます。そこで、まずは先天的な問題で鼻涙管が詰まっているのか、そうではない他の原因が考えられるのか、動物病院でしっかり診てもらいましょう。それから、治療が必要なものなのか、そこまでは不要なものなのかを相談してみましょう。

原因を取り除かないのに処置をしても、再発してしまうだけです。鼻涙管洗浄を行っても涙焼けが治らない、鼻涙管の閉塞が再発してしまうワンちゃんが多いのには、そういう理由が考えられるのですね。

目に異物が入った時も涙は過剰分泌される

目にゴミや自毛などの異物が入った場合は、人間と同じで涙を多く分泌して早く体外に出そうとするシステムが働きます。角膜も傷つく事がありますので、その場合にも涙が過剰に分泌されます。目になんらかの刺激的なものが降りかかってしまったような場合や、タバコの煙なども同様です。

人間のなにげない動作から、低い位置にいる犬に異物が降り注いでしまっている事も考えられます。化粧をしている時や、調理時、食事時などにそばにいるようなら、少し気を使ってあげましょう。

犬だって花粉症や食物アレルギーがある

もしも、涙焼けする時期がある程度偏っているようなら、花粉症などのアレルギーが原因で涙が過剰分泌されている可能性もあります。毎年同じ時期になるとか、くしゃみも併発しているなら疑わしいですよね。また、身体のどこかを痒がっている様子が見られるようなら、食べ物アレルギーの可能性もあります。動物病院でアレルギー検査をしてもらい、過剰に分泌されてしまう涙を止める方法を相談するのが有効です。

マイボーム腺の詰まりも涙焼けの原因になる

人間のドライアイの原因の一つともいわれているマイボーム腺の詰まり。マイボーム腺は、日ごろは目の表面を乾燥させないように脂を分泌させているのですが、何らかの原因でこの脂の分泌口が詰まってしまいます。そして、潤滑油が無くなって乾いた目を潤すために涙が余計に多く出てきてしまうのです。

改善方法としては、ホットタオルで目の周りを温めたり、やさしくマッサージすることでマイボーム腺のつまりを緩和します。

食生活って大事!タンパク質も原因の一つに?

一般的に、タンパク質が不足すると涙の排水周りの機能が十分に働かないともいわれています。

最近は様々な種類のドッグフードが販売されていますよね。ドッグフードは完全栄養食と考えている飼い主さんも多いかもしれませんが、愛犬にそのドッグフードの栄養成分で過不足がないかどうかはわかりません。人間も、まったく同じ食事内容を同じ量だけ食べたとしても、それで足りる人もいれば、それでは足りない人もいますよね。体質や体格、日頃の運動量や生活パターンによっては、もっとタンパク質が必要だったり、ビタミンが必要だったり、炭水化物を減らした方が良かったり・・・。ワンちゃんだって同じなんです。その子によって、必要な栄養素や量にはそれぞれ違いがあります。そのため、ドッグフードを規定量食べていれば、栄養の過不足は無い、とは言い切れないということなんです。

そこで、日ごろのドッグフードに少しだけ茹でササミを加えてみる、マグロを追加してみるなどして摂取するタンパク質量を増やすと改善する可能性もあります。ただし、犬種によってはあまり高タンパクすぎても臓器に負担がかかってかえってよくないという意見もありますので、まずは愛犬のうんちや毛艶などの様子を見ながら、愛犬に合っているフードなのかなどを色々試してみると良いでしょう。ちょっと気長な話になるかもしれませんが、人間の健康管理も一朝一夕ではなく一生かけて行う事なので、同じように考えてみましょうね。

また、タンパク質には2種類ありますよね。植物性と動物性です。犬の場合、もともと肉食の動物ですから、植物性のタンパク質は老廃物となって体に溜まりやすいともいわれています。できるだけ動物性タンパク質を選ぶようにしましょう。

水分が不足しているのに涙が増えるわけ

体内の水分が足りなくなると、ひどい時には脱水症状を起こしますよね。その前段階でも、体は足りない水分では排出しきれない老廃物を汗や涙で出そうと一生懸命頑張ってしまいます。そのため、おしっこが黄色く濃くなり、涙がガンガン出て涙焼けになることもあるのです。

涙焼けしているのと同時におしっこが濃い色になっているようなら、まずは新鮮な水をいっぱい飲ませてあげましょう。なかなか人間の思った通りにお水を飲んでくれないことも多いと思いますが、その場合にはドライフードをふやかしたり、ウェットフードに変える、などすると水分摂取量を増やしやすいです。たくさんの水分で老廃物が流れ出れば、涙も正常に鼻の奥に流れて行ってくれるようになります。

涙焼けになりやすい犬種

涙焼けになりやすい犬種がいるんだよ、という事は動物病院でも聞いた事があるかもしれませんね。これについては専門家の間でも意見の分かれる所ではありますが、実際、涙焼けで苦しんでいる犬たちは、数多くの種の中でも小型犬だったり目が大きい犬種に多いようです。特に、短頭犬種は鼻が短くて涙小管が曲がっているといった構造上の問題でも、涙があふれやすいと言われています。

一般的には次のような犬種です。

・トイプードル
・マルチーズ
・チワワ
・ペキニーズ
・ポメラニアン
・フレンチブルドッグ
・シーズー
・パグ
・ブルドッグ

毛の長い、特に目の周りを覆うように生えているような犬種では、どうしても目に毛が入りやすく、毛が目を刺激する事で傷つくので結膜炎にもなりやすくなっています。それが原因となり、涙が増えて涙焼けになることもあるので、大型犬や鼻の長い犬種でも起きている事はあります。また、毛の色が薄い犬ほど、涙の成分で毛が変色した時の変化がわかりやすく、涙焼けしているのだと気付きやすいです。でも、毛が濃い犬にも涙があふれてしまっている事はあります。なんとなく目の周りが臭くなって涙焼けに気が付く飼い主さんもいるようですから、普段から様子をチェックしてあげたいものですね。

治療は必要?それとも・・・

動物病院での一般的な対応

涙焼けが気になる、と獣医さんに相談した場合、まずはゴミや毛、逆さまつ毛などがないかチェックしてくれます。もちろん異物が入っていれば除去してくれます。でもそれだけが原因ではなさそうな場合、鼻涙管の洗浄をして、鼻涙管の詰まりを改善する事を勧められる事が多いです。この時に炎症が強いような部分が見られたら、点眼や内服薬なども併用して治療をすすめていくことになります。そして外科的治療が必要な原因がみつかれば、(先天性の奇形や細くなっている管など)手術を勧められることもあります。

ただし、鼻涙管洗浄や手術となるとどうしても全身麻酔のリスクがついてきますので、様子を見ながら涙焼けと上手につきあいつつ、治療方法を相談していく流れになる事が多いようです。

動物病院で涙管洗浄をしてもらった人の口コミはこちらです。>>涙焼け、病院で、自宅でできること

原因に応じた対処法を

単純に目に異物が入っているだけなら、取り除けばなんとかなります。でも、長い間目に入ったままになっている異物の代表的なものは目の周りに生えている毛だったり、まつげだったりします。逆さまつ毛があるなら獣医さんに相談してみましょう。目の周りの毛は、丁寧なブラッシングやカットなど、お手入れ次第で改善する事もあります。細菌が繁殖しにくい化粧水やホウ酸を使って拭いてあげるのも有効です。

花粉症やアレルギーの場合は、まずはアレルゲンに接触しないように気を付けてあげる事でかなり改善しますよね。でも、これも専門知識が必要になりますので、獣医さんと相談して治療法を決めていく方が良いでしょう。マイボーム腺などが影響しているような目の渇きも同じです。目が常にウルウルしているような状態から涙焼けに発展していきますので、軽い状態なら目の周りのマッサージや温めで様子見て、それでも治らないようなら獣医さんに相談しましょう。

問題は鼻涙管などに詰まった老廃物です。一説には、食事を手作りにすると涙焼けが改善する子が多いとのこと。つまり、それだけドッグフードに含まれる添加物が老廃物となって詰まっている可能性が高いという事でもあります。手作りフードの場合、栄養管理はきちんと意識しないといけません。人間と同じような栄養バランスだとワンちゃんの場合には圧倒的にタンパク質不足になってしまいます。筋肉がうまく働かなくても、涙の排水システムは狂ってきます。動物性タンパク質を上手に取り込みつつ、できるだけ添加物の少ない、自分の愛犬に合ったフードを選んであげる事が重要かもしれません。

それと同時に、普段の水分摂取も見直してみると良いでしょう。夏場だけではなく、冬場も気が付くとあまり水分を摂れていない事があるかもしれません。様子を細かく観察して、ちょっとずつでも記録をしておくと対策をとりやすくなりますよ。

対症療法は一時しのぎでしかない

鼻涙管を洗浄しても、しばらくするとまた詰まってしまい、いつまでたっても涙焼けがなおったように見えないという事も多々あります。鼻涙管洗浄は、対症療法でしかないのです。だとすれば、鼻涙管の詰まり自体が涙焼けの原因そのものではないですよね。鼻涙管が詰まってしまう原因が別にあるから、いつまでたっても改善しないのです。もし老廃物が原因なら、その老廃物を発生させているのは食事が原因かもしれませんし、水分不足かもしれません。自分なりにこれかもしれないという原因に思い当たるものがあれば、遠慮せず獣医さんにそのあたりの改善をどうすれば良いか相談すると、洗浄以外の良い方法をアドバイスしてくれる獣医さんもいるでしょう。

愛犬の普段の生活スタイルや運動の状況、環境の中にも原因は潜んでいて、どの原因で涙焼けを起こしているか一番発見しやすいのは他の誰でもなく、飼い主さんです。どのへんに原因がありそうかを自分なりにまとめておき、そのうえで専門知識が必要な部分は上手に獣医さんにも相談しながら、まずは普段の生活の中から改善策を考えてみましょうね。

 


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