最近は、歯周病についての認知度が高まってきたためか、歯周病の原因となる歯石の除去のために定期的に歯医者に通っているという方も増えてきました。そのおかげで人間の歯周病患者数は年々減ってきています。

この歯石は、人間特有のものではありません。犬にも当たり前のようについてしまうという事を知っていますか?

人間は毎日歯磨きをしているけれど、犬は特になにもしていない・・・そんな人も結構います。だって野生では歯磨きなんて概念自体がありませんものね。飼い犬になったからって同じ犬なんだから、歯磨きなんてしなくていいんじゃないの?と思っている方もいるかもしれませんね。

実は、犬にも歯石がつくのでお口のケアが必要なんです。ご家庭でのケアの方法などはどうしたらいいのか、見ていきましょう。

ペットには歯石がついても野生の犬にはつきにくい?

犬も人間同様に歯石ができます。でも、野生の犬やその他野生動物には、歯石がつきにくいとも言われています。この違いの理由は、飼われている動物と違って、野生の生活をしている犬は、硬い食べ物や本来その動物に合った自然の食べ物をそのままかじっているからだそうです。

統計をとって野生動物の歯石状況を研究したという報告があるのかないのかは不明ですが、ただ、実際に動物を研究しておられる専門家が比較したところでは、飼われているペットや動物園の動物の方が歯石がついている率が高かったのだそうです。

ガジガジで歯垢が落ちる

もしも、人間が用意した食べ物で歯石がつきやすいのだったら野生に近い食べ物をペットに与えたいと思ったとしても、何かと難しいことも多いですよね。たとえば、犬はオオカミなのだから生肉を与えるために小動物を一頭まるまる手配したりできませんよね・・・。しかも、生きている状態なのか、食肉っぽく処理されたものだとしても生っぽい状態のものなんて、手に入らないでしょうし。(あ、ちょっとグロいかも・・・)

ここで、犬の歯垢事情に特に関係が深いのは、骨をガジガジしているかどうかだと言われています。犬も、人間同様で口の中に雑菌は多くいるのですが、食べ物のカスが歯に残っていると菌が繁殖し、プラーク(歯垢)を形成します。これが放置されると歯石になるのは人間と同じ原理です。つまり、放置されずになんらかの形でそぎ落とされれば歯石にはならないという事ですよね。これが、硬い物をよく食べる野生動物に歯石がつきにくいと言われているゆえんです。

プラスチック製などの骨の形のおもちゃをかじったところでは歯垢除去の効果はないけれど、本物の骨をかじらせると歯磨き効果があるということは有名です。

歯石を放っておくとどうなるのか

歯周病は人間にも犬にも怖い

歯石を放っておくとどうなるのかというと、虫歯や歯肉炎から、歯周病へと発展していきます。ご存知の方もいるかもしれませんが、虫歯の原因になるのはミュータンス菌の存在です。生まれた時の口の中には、このミュータンス菌がなく、生まれてから唾液を通じて感染してしまうのです。

犬の場合も同様で、口の中のミュータンス菌は、人間からうつされない限りは存在しません。犬同士ではキスしないですしね。また、PH値が人間と異なるために、仮にミュータンス菌に感染したとしても増えにくい口内環境なので、虫歯なりにくいとは言われています。

虫歯にはなりにくいのですが、歯石を放っておくことで一番怖いのは歯周病だと言われています

歯周病について歯医者さんから聞いたことがある方も多いとは思いますが、次のようなものです。

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。

歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届かないでいると、そこに多くの細菌が停滞し(歯垢の蓄積)歯肉の辺縁が「炎症」を帯びて赤くなったり、腫れたりします(痛みはほとんどの場合ありません)。

そして、進行すると歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、最後は抜歯をしなければいけなくなってしまいます。

引用:日本臨床歯周病学会HPより http://www.jacp.net/perio/about/

簡単に言えば、最近が歯肉に蓄積されて炎症をおこし、歯の土台の骨を溶かしてしまうので歯を抜かざるを得なくなる、ということです。歯が抜けてしまうと、人間であれば入歯かインプラントにするしかありません。犬の場合には、入歯なんてできないでしょうし、インプラントもしませんよね。インプラントは施術後のケアも非常に難しく、人間でさえ再手術をしたり結局インプラントを止めてしまう人もいるくらいですから、犬には到底無理でしょう。

歯周病になると影響が出る場所は多い

歯周病は、歯が無くなる、食べ物を食べにくくなるという弊害以外にも、身体に対してとても深刻な影響があることがわかってきています。

たとえば、次のようなことです。

・歯周病菌が血液によって脳や心臓にも運ばれて影響し、病気になることがある

・歯周病のために噛む事が難しくなり、食物による栄養摂取の質が下がる

・噛む回数が減ったり、噛む力が減ることで唾液の分泌が悪くなり、胃腸の負担が増える

・唾液には発がん性物質を中和する働きがあるともいわれており、唾液が減る事でがんの発生リスクが高まる恐れがある

このように、どちらかというと全身に対して悪影響を及ぼす可能性があり、決して口の中だけの問題というわけではないのです。

歯石のせいで頬や鼻に穴が開くことも!

人間も犬も同様ですが、歯周病を放っておくことで、菌が様々な場所に入り込みます。その中でも怖い症状の一つに、「根尖膿瘍(こんせんのうよう)」というものがあります。歯の根の部分に菌が入り込み炎症を起こすのですが、ひどくなると膿んでしまうのです。そして骨を溶かし、やがては皮膚も破り、穴が開いたような状態になってしまうのです。

もしも鼻の内側に穴が貫通した場合には、くしゃみがとまらなくなったり、鼻から出血したりするようになります。また、外から見てもはっきりわかるくらい目の下の頬あたりに穴が開いてしまうこともあるのですから、恐ろしい病気です。

歯石をすっきり取る方法

知ってみると結構こわ~い歯周病。その原因となる歯石を取る方法はいくつかあります。ただ、できればしっかりきっちり取って、しっかり病気を予防したいですよね。そんな時はぜひ専門家に頼んでみましょう。

かかりつけ獣医さんに相談する

歯石を取るためにはそれなりにガリガリ擦る作業が必要になりますので、犬も慣れていないと怖がりますし歯茎近くはある程度痛いはずです。そのため、かかりつけの獣医さんなら、普段の愛犬の様子をよく知っていますし、犬の方も通いなれた動物病院なら安心して身を任せてくれるというメリットがあります。

歯石をカリカリするときに、嫌がる犬を無理やり押さえつけてやるのか、それともやさしくだましだましやるのかで、その後の歯石ケアがしやすくなるか否かが変わってきます。もしも歯石ケアが大っ嫌いになってしますと、犬も飼い主もその後の定期的なケアのために大変な思いをするかもしれませんので、獣医さんの犬の扱い方は大事なポイントかもしれません。(1回歯石がきれいになればいいってものじゃないってことですね。)丁寧に犬の気持ちに寄り添ってメンテナンスしてくれるところなのか、犬にとって安心できる所なのかは普段からよく見極めておき、依頼するようにしましょう。

歯石ケアには麻酔をつかうこともある

歯石取りをする時に、全身麻酔をするのか、麻酔はせずに歯石を取るのかという部分も獣医さんによって違います。また、愛犬の歯石のつきかたや状態によっても違います。歯石といってもまだわずかしかなく、見えている範囲だけをカリカリするだけですみそうなら、麻酔なしでも良いかもしれませんし、全体にしっかりびっしり歯石がついてしまっていたり、歯周ポケットの中まできっちりきれいにしなくてはならない場合は痛みを伴いますので、全身麻酔をした方が犬にとっても良い場合もあるでしょう。

ただ、全身麻酔をした場合とそうでない場合では犬の体にかかる負担と、費用の面で大きな差があります(この後で参考費用をご紹介しています)。全身麻酔に弱い犬種もいますし、まれに麻酔事故によって寝たまま息を引き取ってしまう可能性も0ではありません。逆に麻酔をかけないことで暴れて、余計な骨折などの怪我につながる可能性も0ではありません。そのため、麻酔を使うことに絶対にいいとか、悪いということは言えません。ご自分の愛犬の状態、特徴をしっかり把握したうえで、かかりつけ獣医さんとよく相談し、最善の方法での歯石取りをお願いしてみましょう。

歯石ケアの参考費用

ここで、気になる費用について参考費用をご紹介しておきます。全身麻酔をする場合は術前検査込みで2~5万円くらい、全身麻酔をしない場合は2千~1万円くらいとなります。動物病院によっても価格は大きく幅がありますのでざっくりこのくらいですが、かかりつけ病院に電話で直接費用について聞く事もできます。予め確かめておくと安心ですね。

動物専用歯科医師さんに頼む

人間のお医者さんもそうですが、広く様々な症状を診察する医者と、専門的な特定の領域において深い知識をもつ医者とがいますよね。動物の場合も同様です。歯のことであれば、歯専門の動物病院の方が様々な状況に応じた歯科治療を行うことができます。

例えば、2014年にできた「花小金井動物病院」という動物専用の歯科クリニックがあります。ここでは、動物専門の歯科医療の発展のためにも獣医師へ勉強の場を提供されています。一般の獣医さんも、もちろん動物の歯に関する知識はお持ちですが、広く他の病気にも対応するために様々な知識をたくさん持っている分、日ごろは専門的な知識や技術の習得となるとなかなか難しいのかもしれません。

さらに、これまでは犬は虫歯になりにくいとされてきて、歯に関する深い専門性は後回しにされてきた感じがあるのかもしれません。そのような背景の中、動物のオーラルケアに関して注目し、ただ単に悪くなったから抜歯するというだけではなく、人間のようにQOLも考慮した専門的な治療をしようという先駆者がこの「花小金井動物病院」なのだそうです。ちなみに、今のところはセカンドオピニオンもされていますので、もしも愛犬の歯の治療方針について不信感があるような方も、通える方は参考にしてみてもいいかもしれませんね。

参考HP: 花小金井動物病院 http://hanakoganei-ah.com/

病院に歯石取りを頼んでもペット保険適用できる?

歯石取りの場合、ペット保険会社はほぼ共通して、美容目的などで口腔内症状がない状態での歯石取りに関しては保険適用外とされています。ただ、歯周病や歯槽膿漏があり、歯石取りを必要としているといった場合には適用になります。愛犬の状態の場合にはどちらになるのか、獣医さんによく聞きながら、保険が適用できる処置かどうかを判断しましょう。

歯石取りだけとはいえ、麻酔を使っての施術をするとどうしても高額になりがちです。適用されるのとされないのとでは負担が大違いですよね。できれば、出費は押さえたいというのは皆さん同じだと思いますが、とは言え、必要な処置であればかわいい愛犬のために仕方がありません。場合によっては、保険が適用されることもあるので、ペット保険に加入しておいてよかった!という場合もあるかもしれませんね。

ペット保険については、こちらも参考になさってみてください。

ペット保険はどう選ぶ?おすすめの保険タイプは?

老舗・最安・口コミ人気、ペット保険どこがいい?

「あって良かったペット保険」ってどんな保険?

トリミングついでに歯石を取ってくれる所もある

犬の口臭に悩まれて、歯のケアもした方が良い!と世間に広まりつつある昨今では、麻酔なしの歯石取りをトリマーさんが行ってくれる所も増えてきました。トリミングついでに口もしっかりケアして、全身ピカピカ健康になれると犬も飼い主さんも嬉しいですよね。

このお口ケアの費用も1000~3000円ほどと、比較的リーズナブルです。ペットショップやしつけ教室などでも行われている場合も多いのですが、いずれも獣医師免許なしで行うことで、トラブルが増えているという報告もあるようですから、信頼できるサロンなのかどうかチェックが必要です。

自宅で歯石をとる方法もある

まだ歯周ポケットの中までガリガリやらなくてもすみそうな軽度の歯石の場合、予防的な措置なら家でも歯石取りができます。慣れている場所で愛しているご主人様がしてくれる歯石取りなら、病院に行ってしてもらうよりはストレスが少ないかもしれませんよね。また、自宅であれば気が付いた時にさっとケアしておくことで、それ以上ひどくなることをストップさせることにもなります。

頻度などはこちらを参考にしてみてください。

犬の歯石ケアの頻度は?どうなったらやった方がいいの?

自宅で歯石ケアを行う場合は、次のような器具で行います。すべてそろえる必要はありませんので、愛犬とご自身の使い勝手の良い物を選ぶようにしましょう。

・スケーラー

歯医者さんがよく歯石取りに使っているカリカリする金属製のピンのようなものです。人間用のものでもかまいません。どちらかというと人間用の方が安く、質も良いのですが、大きさは犬に合った物を用意する方が作業しやすいです。

参考価格:1600円

・鉗子(かんし)

大きめの歯石とか、尖ってはがれやすくなった部分などにはこれで挟んで剥がすこともできます。綿を挟んで耳掃除に使うこともできますので、一つあると便利です。


参考価格:980円

・歯石取り用ペンチ

こちらは挟むだけで簡単に歯石が取れるという優れものです。ただし、細かな部分は難しいので、スケーラーと併用した方が良いかもしれません。


参考価格:9720円

ペンチなんて難しそうと思うかもしれませんが、動画を見てみると意外とできそうな感じです。

・歯石取りスプレー

長期間毎日使用するうちに徐々に歯石が取れてくる商品です。ただし、味や成分によっては向かない子もいますので、チェックしてあげてから使いましょう。


参考価格:4212円

この他にも、歯石取り用ジェルや、シートもありますが、いずれも強力に歯石をスッキリ取るというわけではないので、スケーラーで取る時の補助として、歯石を浮かせて取りやすくするなど併用する方が良いでしょう。

道具の次はやり方を慣れさせることも重要

この動画のように、自宅でリラックスした状態のワンちゃんに少しずつ器具でカリカリすると、次第に慣れておとなしくさせてくれるようになるようです。暴れてどうしようもない状態で無理に押さえつけてやってしまうと、ワンちゃんにも飼い主さんにも危険になりますので、少しずつ、気持ちに寄り添いながら慣れさせてあげてくださいね。

歯石のできやすさは犬種によっても違いがあります。こちらも参考にしてみてくださいね。

歯石ができやすい犬種はお口のケアを大切に!要注意の犬種

 


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