愛犬がどうしても言うことをきかないとき、お手上げになって、それでもなんとかしなければならないとき…つい叩いてしまう人もいるかもしれません。叩くと、噛む、唸る、鳴く、震えるなど、さまざまな反応を見せますが、決して根本的解決には至りません。叩くという行為は“絶対に”してはいけないことです。なぜしてはいけないのか、するとどうなるのか、一緒に考えていきましょう。

叩かれたときに犬が感じていること

人間であれ、動物であれ、相手の気持ちになって考えるということは、とても大切なことです。犬にだって豊かな感情があります。犬は叩かれたときに、どう感じるのでしょうか。

犬はしつけの一環だと分からない

人間から見て「してはいけないこと」も、犬はそうだと認識していません。認識していないから、してしまうのです。だから「してはいけないこと」をした自覚がないのに、叩かれても何のことか分かりません。

その時に人間がいくら説明をしたところで、犬にとってはその話が複雑すぎて、どうしても理解することができないのです。「お手」や「待て」などの、シンプルなことは覚えることができるのですが、叱られても叩かれても「自分がしてしまった行為がいけないことだった」と理解することまではできません。

「これをすれば叩かれる」と覚えれば、その行為をしなくなる、ということは確かにあるかもしれません。しかし、それに伴い失ってしまうものがあまりにも大きすぎるのです。

いきなり威嚇・攻撃された

犬はなぜ叩かれたのかが理解できないので、ただ理由もなく威嚇・攻撃されたと認識してしまいます。そうすると、自分の身を守るために、逃げたり、構えたり、時には反撃に出たりします。こうなってしまうと、もう犬にとって飼い主は「」でしかありません。また、この印象が犬に強くインプットされると、飼い主を見ただけで、危険だと本能的に判断してしまうことになり、条件反射で威嚇したり遠ざかったりするようにもなりかねません。

信頼していた大切な人に傷つけられたら…

人間は家庭、職場、友人や趣味の仲間など、人によってはいくつもの「交流関係」を持っています。しかし、ペットとして飼われている犬には、その家族だけなのです。自分の居場所を自ら選ぶこともできず、他の家庭を知ることもなく、ただ目の前にいる家族がすべてで、信頼して、愛情を注いでいるのです。
それなのに…

これまでは自分を撫でてくれていた手が、突然、自分を叩くものに変わる。
自分に愛情を注いでくれていた飼い主が、突然、自分に敵意を向ける。
しかも、なぜそうされるのか分からない…。

「その時だけ」とか「理由がある」とかまで理解できない犬にとって、これほど悲しいことはありません。そのあといくら優しくされたとしても、その前の「恐怖や敵意を感じた」という事実を打ち消すことは、どうしてもできないのです。

一度ですべてが崩れることもありますし、一旦は気がまぎれてなんとなく元通りになったように見えても、犬は自分の身を守るための本能から簡単に忘れることができず、やがて記憶に蓄積されていき、事あるごとにフラッシュバックすることもあります。そうして、飼い主への信頼という、一番大切なものが失われていくのです。

でもしつけも必要。どうすればいいの?

だからと言って、野放しにする訳にはいきませんよね。やはり「家族」という社会で暮らす以上、ルールもあります。人を傷つけることだって、あってはなりません。でも、叩く以外にも方法はあるのです。少し時間と根気のいることですが、ひとつずつ見ていきましょう。

信頼関係・主従関係を確固たるものにする

そもそも犬を叩かなければならないほどのことが起こるというのは、きちんと信頼関係や主従関係が築けていないケースがほとんどです。犬はもともと群れで生活をする性質を持っており、そのなかで縦社会の順序を重んじる生き物です。従うべきボスがいれば、きちんと従います。そこが曖昧であったり、飼い主よりも自分の方が上だという認識を持ってしまっていたりしたら、なかなか言うことをききません。では、そこができていないなら、どうしていけばいいのでしょうか?

しつけの基本「待て」と「よし」から

その犬は、「待て」と「よし」ができますか?もしできないなら、必ずマスターしましょう。おやつを用意して、「待て」と声をかけます。ここで待てないからといって、叩いてはだめですよ!

さっとおやつを引いて、「待て」ができるまで与えないだけです。ほんの数秒でも待つことができたら、「よし」と声をかけて、たくさん褒めてあげましょう。最初は、この「待て」から「よし」の間が短くてもいいのです。慣れてきたら、少しずつ時間を伸ばしていきます。

 

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愛犬のお手のしつけ方法は?

しつけの正しい手順は?

愛犬の待ての教え方は?

 

「お手」や「伏せ」など、従うことを増やしていく

「待て」と「よし」ができるようになったら、次に「お手」や「伏せ」なども挑戦していきましょう。犬に「飼い主に従う」という経験を、小さなことからたくさんさせるのです。こうして従うことに慣れさせていけば、いざというときに、言うことをきかせやすくなります。

また、ちゃんと言うことをきけたあとは、おやつをあげたり、思いきり褒めてあげたりしてくださいね。褒めすぎかと思うくらい、たっぷり褒めてあげましょう。飼い主の言うことをちゃんときくと、こんなにいいことがあるということを経験させるのです。

言うことをきかなければ怖いことがある」ではなく「言うことをきけば良いことがある」という風に覚えさせた方が、犬はどんどん学習するし、犬も飼い主も幸せです。

シンプルな合図を決める

これらの基本ができたら、次はしてはいけないことをしたときに使うかけ声を決めてしまいます。「ダメ」とか「NO」とか、できるだけシンプルなものにして、たったひとつに絞ってください。もし犬が、してはいけないことをしそうになったら、その言葉で制御します。ほかの言葉は一切要りません。

むしろ、ない方が犬には分かりやすくていいです。このとき気をつけなければならないのは、名前を一緒に呼ばないこと。「(犬の名前)、ダメ!」などと言うと、その名前も「ダメ」という言葉とセットで覚えてしまいます。

それでも言うことを聞かない場合は…

これらがすぐにできるようになればいいのですが、その道のりは遠いかもしれません。できるようになるまで、なんとかしなければならない…そんなときは「無視」を徹底します。

2、3回かけ声をして、それでも言うことを聞かないときは無視をします。暴れたり噛みつこうとしたりして危険なときは、犬が落ち着くまで別の部屋に移って距離を置きます。(このとき、犬の方を移そうとすると、さらに暴れることになりかねず、また犬もなぜ無理やり連れて行かれるのかが理解できないので、人間が移る方がいいでしょう。)

外にいるときは、首輪とクッと引くなどで合図を送ります。「かけ声」(または首輪の合図)と「無視」で、とにかくシンプルに指示していくことが大切です。これらのことを、とにかく根気強く、ひたすら繰り返していきましょう。犬が飼い主をリーダーだと認識さえすれば、しつけは信じられないほど楽になります。大変かも知れませんが、どうかがんばってください。

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まとめ

これらのことから、犬は叩いても言うことを聞かないということが、そしてそれにはちゃんと理由もあることが分かりました。そして、叩かなくてもしつけられるということも分かりました。叩くというのは、その場しのぎの行為でしかなく、それを繰り返せばいずれ取り返しのつかないことになってしまいます。

そうなる前に、犬との関係を根本から見直していきましょう。しっかりとしつけが行きとどいて、犬との生活がより幸せで楽しいものになるよう願っています!


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